非効率の必要性
うちの会社は久光デパートの近くなので、今日もランチのついでに久光デパートでちょっとお買物。久光デパートはそごうデパート系なので、品揃えは上海随一なのだが接客は中国式。まぁ、中国にいるから当然であって、そんなことに文句を言ってはいけない。
中国デパートを知らない方のために簡単に説明しますと、中国デパートでの支払方法は、①商品をレジへ持って行き、レジで伝票を切ってもらう。②伝票を支払カウンタへ持って行き、商品代金を支払う。③支払済み伝票を再度レジへ持って行き、商品を引換える。といった流れ。10年程前に中国へ来た時も同じだったので、ずっとこのスタイルなんでしょう。
さて、今日は200元(=3000円)の雑貨を買ったところ、②の支払カウンタにて、久光デパートのVIP会員だったので5%の割引をしてくれた。こっちから頼んでもいないのに10元(150円)安くなった。そして、③の商品引換えに行ったら、レジ嬢から「この商品は割引の対象外。だから、この伝票は10元足りないから、ここで現金10元を支払ってくれ」とのこと。ランチ後の満腹感のおかげでこんな理不尽な状況にも「オマエラ、馬鹿か！」と怒鳴りもせずに、「そっちが勝手に値引きしたんだから、お前が支払カウンタへ行って話して来い」と言うだけ。そして、待つこと10分。戻ってきたレジ嬢は、支払カウンタ嬢に怒っていました。どうやら、以下のような口論があったようです。、
支払カウンタ嬢「あなたがはっきりとこの商品は割引対象外と書かないから、割引したのよ。だから、そっちのせい！」
レジ嬢「こんなにもハッキリと書いているのに、あんたはどこ見ているのよ！」
支払カウンタ嬢「お客様はカードで払っているから、もう変更は無理！」
レジ嬢「とにかく、そっちのせいよ！キィィー！！」
キィィー！！というのは勝手な想像でしたが、とにかく怒りながら戻ってきたレジ嬢の私への説明では、
「あなたはカードで支払っていて変更が面倒だから、値引きのままでいいわ」
私「・・・(無言)」
俺は最初から値引きしろなんて頼んでないよ、このアホタレ。
後は商品を袋に入れ持って帰るだけなのに、ここでまた余計な横やりが。どうやらこの商品の指定袋はリボン付きのようで、それまでレジ嬢とチャットしていた暇そうな男性(所属不明)が、明らかに不慣れな手でリボンを結ぼうとします。簡単なリボンと格闘するほど2，3分。結局、彼はリボンを結べませんでした、なぜならリボンの結び方を知らなかったから。そして、レジ嬢へ戻す。
やっとレジ嬢から商品を受け取った頃には、最初にレジに商品を持って行った時から15分も経過していました。
でも、ここで「日本なら30秒だよ！」とか言って怒っていけません。待っている間にずっと自分に言い聞かせていました。「この人口の多すぎる大国には無駄が必要なのだ」と。無駄が無くなってしまったら、何億人もの人が職を失ってしまいます。
ちょうど10年前ぐらいの中国のデパートを思い出しました。その頃のデパートなんて、ほとんどお客がいません。でも、お客の代わりに売り場には販売員が溢れていました。その光景が印象的だったのでずっと覚えていましたが、今ならよく分かります。何か仕事が必要なんです。こっちでアイさんと呼ばれる一家に一人のお手伝いさんも同じです。海外ではお手伝いさんなんてお金持ちの象徴みたいな感じですが、こっちではお手伝いさんの自給なんて100〜200円。すっごく安いけど、アイさんにとってはそれでも収入があるだけマシ。
友人に外資系5星ホテルの営業責任者がいます。ヨーロッパでホテル経営を学んで戻った上海人の彼女の下には100人を超える従業員がいますが、責任者としての彼女のもとにはお客様からの苦情が多くて大変だそうです。通常、ホテルの部屋数に対する従業員の比率は1.5倍だそうです。しかし、ヨーロッパの人経費は非常に高いので最近のホテルマネージメントの流れは、各従業員の作業効率を上げることによって部屋数に対する従業員の数を減らすことを要求されるそうです。それに従って、彼女のホテル(部屋数200程度)では、従業員は200人ちょっとだそうです。で、寄せられる多数の苦情。
上海人の彼女曰く「中国で個人の効率を上げることは非常に困難。サービスの質を上げる一番の方法は従業員を増やすことなんだけど、本社の人間にはそれが理解できないの」
話が長くなったので何が言いたいかをまとめますと、
1. 無駄が無くなると職を失う人が多くなので、“作業効率は悪くある必要がある”
2. 皆が低い作業効率の仕事に慣れきっているので、“作業効率を高めるのが困難”
3. 人経費の高い国から中国に来た人達は、以上の理屈をよく理解して“イライラしない”
でも、イライラしちゃうんですけどね。頭で分かってはいても。
久光デパート隣の静安寺
静安寺のライオンってパーマかけてたのね
