顧客重視と計画経済

先週土曜日午後から月曜日にかけて、2泊2.5日で東京に戻っていました。ちょっと野暮用があったのと、往復航空券が税込み2080元(=32,000円)と激安だったので急遽決めたことでした。いろいろとやりたいことがあったので、誰にも連絡せず、誰とも会わずのショート滞在でした。
ここ最近、月一のペースで東京へ戻っているので、以前のような久しぶりに戻ったときの感動はありませんが、ふとしたことで小さな感動を得たのでブログで伝えたいと思います。


土曜日の午後の便で上海を経ったので、NEXに乗って新宿に着いたのは午後9時近くでした。新宿へ寄ったのは買い物をしたかったからでしたが、既にほぼお店は終了状態でしたので、昔よく行ったカフェでパスタを食べることにしました。中国ではまだ少ないアルデンテなパスタを食していると、ちょっと辛味が欲しくてタバスコが欲しいなと辺りを見渡しました。正確には、“見渡そうとして、後ろを振り返った”だけでした。
すると、私のその挙動にすぐに反応してウェイトレスの方が来てくれましたので、その方にタバスコをお願いしました。
と、もしこのブログを読まれている方が日本にお住まいならそんなに特別なことではないと思われるかもしれませんが、既に中国での生活が10ヶ月を過ぎた私はちょっと感動して、なんだか嬉しくなってしまいました。その後は、一人でニヤニヤしながらパスタを食べていました。


「お客様は神様」が誰の言葉か忘れましたが、お客様は大切であるという意識は日本では徹底しています。思い起こせば、恥ずかしながら傍若無人だった私の学生時代、高1から駒場東大前駅前の「サンクス」というコンビニでアルバイトを始めましたが、そんな普段は傍若無人な私ですら、誰から教えられたのでもなく、お客へは礼を持って接しなければならないという意識が自然とありました。これは日本の社会で育った者なら自然と共有する意識のようです。日本の良いところは、こういった意識が日本中どこでも同じ、“均質である”ということだと思います。
もちろん、それは日本が島国でほぼ単一民族であることが大きいのでしょうが、これは世界に誇れる日本の美徳だと海外で出てから気づかされました。


それゆえ、近年の日本でそのような意識が欠けた若者(=Anomaly)が増えていることに対して、多くの大人たちは「まったくなっとらん!」と強く反発を覚えるのだと思います。それは均質であるという日本の良さが失われることへの危機感から来るものかもしれません。
さて、やや話が中国から脱線しましたが、話を中国に戻しますと、中国では「お客様は大切」「顧客重視」という考え、意識が基本的にはありません。(と日々実感しています)実は中国に来てから気がついたことがあるのですが、
そもそものこの国には「お客様」「顧客」という概念が存在しないのではないか、ということに。
考えてみれば、計画経済では皆が党より与えられた仕事に従事している同志なのです。だから、例えばある工場労働者がレストランでウェイトレスへ注文していても、その関係は、たまたま工場勤務へ配属された同志と、たまたまレストランへ配属された同志、ということになります。そして、毎日工場である決まったノルマをこなすとおなじように、ウェイトレスに与えられた仕事は、注文を取る、料理を運ぶ、の以上です。
決して、そこにはお客様へ気を使う、笑顔でもてなす、は仕事には含まれていません。それ以外のことを頼まれた時には、“理解できない”といった顔をして無視すればいいのです。だって、それは私の仕事じゃないから。


こう考えた時、中国における接客の態度に全て納得がいきました。
なるほど、彼らの意識は「接客をしている」のではなく、「与えられたノルマをこなしている」だけだと。中国に来て以来、日々外へ出ると不愉快な思いをさせられ、怒ることが普通となっていましたが、本当は怒るポイントではなかったようですね。(てか、どないせぇっていうねぇん・・・、この俺に)そして、それゆえ日本の普通のウェイトレスの何気ない対応に感動してしまったのです。

ただ、最後にやや中国をフォローしておきますと、今の中国はゆっくりと計画経済から市場経済への変革を進めていますので、今後は非常にゆっくりでしょうが、少しずつ、少しずつ変わっていくでしょう。(本当にそう期待したい)実際に既に上海では、外資が経営しているところでは心地よいサービスを受けられるところが多いです。しかし、そういうところは日本より物価が高いので、上海で心地よい生活を送ろうとすると日本よりずっと高くつく。

安いけどストレスの多い毎日か、ストレスは少ないけどお金の無い毎日か・・・
なかなか難しい上海での生活です。